【LOONA】今更ながら、LOONAverseについて一度まとめてみる① プロローグ 1/3:出会い、運命
0.はじめに
本記事は、LOONAの繰り広げる世界観 "LOONAverse" について、数多くの国内外のOrbitたちの素晴らしい分析と考察により、現時点で明らかになった部分の解釈について簡易的にまとめてみるものです。以下注意点
Ⅰ 本記事の内容は、公式からのヒントをもとに、極めて基本的な考え方をまとめたものであり、筆者の若干の考察と、他のオービットの考察の引用で成り立っています。
Ⅱ 映像の表面的な象徴を拾って構築されたLOONAverseと、MVの伝えるストーリーとは本来別のものであり、お互いに相容れないものですが(例えば「다녀가요」の伝える少女の片思いの物語に、ブレスレットだなんだという世界観構築のためだけの要素は邪魔なだけである)、アイドルとしてのLOONAの全体像を考え、本記事ではその双方を考察に盛り込みます。
Ⅲ 先行して公開した世界観入門動画を先に見ていると、全体の流れが理解しやすいかもしれません。(URL : 世界観入門①)
1.LOONAとは
LOONAverseのお話を始めるにあたり、まずはLOONAの構造について軽くまとめておきたい。
LOONAは2016年9月に1番目の少女ヒジンを公開して以来、毎月ひとりずつ(とはいえユニット活動を挟んだりするので実際は隔月で)新しい少女を公開し、2018年3月までに12人の少女を披露した。
この12人の少女たちは、LOONA1/3、LOONA ODD EYE CIRCLE、LOONA yyxyの3つのユニットに所属し、それぞれが全く別の世界観を築いている。ここらあたりの基本情報から分からない人は初級編の動画から先に見ると理解し易いかもしれません。
(以下、それぞれ1/3、OEC、yyxyと表記)
これらのユニットはそれぞれ、1/3=地球、そしてその地球の上にあるyyxy=エデン(天上界)、そしてその二つの間に位置するOEC=中間世界という場所に位置しており、12人の少女たちはお互いの存在を知らないまま暮らしている。
つまり、平面上で考えれば、上からyyxyのエデン、OECの中間世界、1/3の地球、という順番にそれぞれが位置しているということになる。
ちょうど180度上下反転すると、LOONAの世界観を表す地図になってしまうという粋な画像
これが地理的な面から見たLOONAの世界観。
そして、LOONAの世界観の鍵となる概念がもう一つ。
LOONAの世界観を築いた張本人 Jaden Jeongのインスタ(@jaden_jeong)より
LOONAの世界観はメビウスの輪のイメージに象徴されるように、終わりのない軌道を繰り返し繰り返しループするという法則がある。
LOONAverseの考察者のひとりであるCaskerさん(@caskerbox)の解釈をお借りすると、12人の少女たちは、予めお互いが「繋がることへの内在的な渇望」を持っている。それは、彼女たちの世界観の中で、大きく分けて3つの行動として表れる。
「向かうこと」「探すこと」「上昇すること」。
I came up with three main connections:
— c&sker 🕊️ 💚 (@caskerbox) 2018年8月21日
[ to go ], [ to find ], and [ to ascend ]
というわけで、ものすごく簡単に説明すると、LOONAのストーリーは、お互いに別々の世界で暮らす運命である少女たちが、これらの原理に基づいて、繰り返されるメビウスの輪を破ることではじめて出会うという話なんである。
この前提をまず念頭に置いて頂いて、次にそれぞれの少女たちの役割とストーリーの基本的なところを話していきたいと思う。
2.最初のユニット "LOONA1/3"
LOONA最初のユニットであるLOONA1/3はヒジン/ヒョンジン/ハスルの3人と、もう1人の新メンバービビ、更そしてに既に公開されているが、ユニット活動に参加していない(/を表す)ヨジンからなり、2017年3月31日にタイトル曲「Love & Live」でデビューした。
+ 活動には参加していない末っ子ヨジンバブ!
1/3のメンバーは、地球で暮らす平凡な少女たちとして、それぞれの方法で愛を語る。
他のユニットに比べて、MVの内容は比較的理解しやすい方だ。ヒジンは『不思議の国のアリス』、ヨジンは『カエルの王子様』という風に、全てのMVが童話や映画、漫画などのオマージュとなっているため、ストーリーも分かりやすい。
愛をモチーフにした平凡な彼女たちの悩みは、LOONAの世界観を理解するにあたって、それほど重要でないとも言える。実際、1/3のMVでは、LOONAの世界観についてはそんなに語られない。そのため、この時点ではLOONAverseの構想はまだ固まっていなかったのではという説もちらほら。
しかし、彼女たちは世界観の中で実はかなり重要な役割を担っている。
"우리의 목표는 음원 차트 1위가 아니라 이달의 소녀라는 세계관을 넓혀나가는 것!" '이달의 소녀 1/3'은 단순한 유닛이라기 보다 '이달의 소녀'라는 세계관을 대중들에게 처음 선보이는 선발대의 역할을 부여받고 2017년 3월. 앨범 [Love&Live]를 완성했다.
"わたしたちの目標は音源チャート1位ではなくLOONAという世界観を広げること!" (中略) 'LOONA1/3'は単純なユニットというよりも'LOONA'という世界観を大衆に初めて披露する選抜隊の役割を付与され、2017年3月、アルバム[Love&Live]を完成させた([Love & Live]アルバム紹介より)。
LOONAの世界観を世界に知らせ、その土台をしっかりと固めることである。LOONAとしてのはじまりを大衆に披露するということが、1/3が担う一番重要な役割だと。
そして1/3に関してもうひとつ重要なのが、「日常」である。1/3の世界観の中で「日常」は需要な位置を占めていると考えられる*1。1/3は楽曲のMVが多いことも特徴の一つであるが、カップリングとして収録されている「
youtu.beタイトル曲「Love&Live」のNGカット集のようである
また、<Cinema Theory : Up&Line>にて公開されたVIVI: Letter to Hongkong (ViViが香港に送る手紙)(これ初見まじで怖いので気を付けてください)では、ViViが韓国でアイドル生活を送る様子を香港にいる両親に向けて話すブイログのような映像の中で、突然「以前の記憶も少しずつ戻ってきたような気がするし…」などと意味深な台詞が入り、映像がただのブイログではなくLOONAの世界観の一部であったことに気づかされる。このように、1/3では日常と世界観の境目がぼんやりしていて、はっきりと区別がなされていないのである。
同じように、アイドルとしての彼女たちと、LOONAの世界の中の彼女たちもある程度リンクしている*2。
世界観と日常、そしてアイドルとしての舞台上の彼女たちの姿が様々に混じった、LOONAの中で一番解釈の難しい1/3。メンバーそれぞれのMVの解釈も様々であるが、現時点でほぼ確定的になっている情報を中心にまとめていきたい。
①ヒジン「ViViD」
2016年9月25日、LOONA1番目の少女として公開された。大衆に披露する最初の少女として、ヒジンのMVではLOONAの世界観の全体像を紹介する(※ヒジンのMVはDigipediによるものではないため、LOONAの世界観の文脈で解釈すべきではないとの意見もある)。
MVは白黒の世界から始まり、家の主人と見られる女性がヒジンに部屋の掃除を頼む。つまらない日常に飽きたヒジンは、カラフルで楽しい妄想の世界を夢見るようになる。ここだけ見ると一見継母に虐められるシンデレラの話のようであるが、MV全体は『不思議の国のアリス』をモチーフとする。アリスの文脈に沿うようにして、MV内のヒジンが妄想の中でLOONAの世界を訪れる、という形でLOONAverseは世界に初めてお披露目される。
▼시하월様による「ViViD」MV解釈。MVに登場する各部屋はLOONAの世界観(=エデン、地球、中間世界)であり、MV全体でLOONAの世界観そのものを説明しているとする。m.blog.naver.com
「ViViD」のMVにLOONAverseに関連する世界観が込められているかどうかはさておき、「ViViD」は1/3の特徴である ①童話や映画のオマージュであること、➁世界観が限りなく日常に近いということ(Acoustic Mix)を満たすことで、1/3の特質を世界に披露したといえる。「LOONAという世界観を広げること」を目的とする1/3の最初の少女として、ヒジンはその土台を敷く役割をした。
※ViViDの歌詞「많은 색깔로 채워줘 빨주노초(たくさんの色で塗って 赤橙黄緑)」に関して、それぞれの担当色を持つメンバーをヒジンが作ったと考える説が主に韓国外で多く見られる。この説は、ヒジンがLOONAverseの創造主であり、他のメンバーはヒジンによって作られ、それに反発するオリビアヘがビビを殺し… というように進んで行くが、これらの解釈は、LOONAverseのストーリーだけを重視するあまり、LOONAがMVを通して伝えるメッセージ性とは大きくかけ離れることとなるため、当記事ではこの後も扱わない。
➁ヒョンジン「다녀가요」
2016年10月28日、LOONA2番目の少女として公開された。ヒョンジンのMVは、本筋のストーリーの中に世界観を構築する要素が入り混じっており、LOONAのMVの中でも解釈が極めて難しいものである。
まず、MVの本筋であるストーリーは、松たか子主演の邦画『四月物語』(1988)のオマージュとして知られる。『主人公が片思いをしている相手に想いを伝えられず思い悩む、というように『四月物語』と同じように展開するMVの内容は、「말없이 또 다녀가요(言葉をかけることもなく、また通り過ぎます)」という歌詞とも一致している。日常に退屈していたヒジンと同じように、ヒョンジンも現実に対して些細な悩みを抱えている。繰り返される日常に対する悩み、これが1/3のMVのストーリーに共通するテーマでもある。
ところが、「다녀가요」のMVには、本筋とは何ら関係ない、LOONAverseを構築するためだけの要素がところどころ入り混じっている。例えば、MVの中でヒョンジンが見つけたブレスレットは、チュウとゴウォンが作ったものだということが後に明かされた*3。
- ブレスレットと、それを見つけてほほ笑むヒョンジン。右はゴウォンがブレスレットを作る様子。
このブレスレットに関しては、様々に推測されるが、ブレスレットを見つけた後のヒョンジンが黄色のニットから紺のワンピースへと変わったことから、ヒョンジンは元々OECに属していたが、ゴウォンたちにより地球へ墜落した、などとするのが現在の一般的な解釈である。
ヒョンジンは、特に黄色の補色である紫を象徴色に持つことから、チェリとの関連性は指摘されるが、ここではヒョンジンはOECとの関連が深いという程度に留めておく。
③ハスル「소년,소녀」
2016年12月8日、LOONA3番目の少女として公開された。ハスルのMV「소년,소녀」は、LOONA全体のストーリーの鍵となる「アイデンティティの模索」が初めて主題として扱われた作品となった。
MVの中で、ハスルは少年の姿として、また少女の姿として表れる。これらは、中性的な魅力を持つハスルが、自我を模索する過程で生まれたふたつの人格であると理解できる。しかし、MV終盤、少女ハスルは少年ハスルを打って殺してしまう。
この場面について、解釈は主に二つに分かれる。
1. 少女ハスルが少年ハスルを殺すことにより、ハスルは本当の自分(=少女としての姿)を見つけることができた。すなわち「소년,소녀」のMVは、ハスルがアイデンティティを確立するまでの過程を表したものである。
▼HRJJ様の「소년,소녀」MV解釈。LOONAverseにおけるアイデンティティの模索、そして本当の自分を見つけ"覚醒"に至るまでの過程を人類学での「입사식(=イニシエーション、通過儀礼)」と捉える。
2. アイデンティティを確立することとは、多様な面を持った「複数の自分」の姿を認めることである。少女ハスルが少年ハスルを殺すことにより、ハスルは本当の自分に出会えなくなってしまった*4。
‘하슬’은 짧은 금발의 톰보이 컨셉과 긴 머리의 소녀 컨셉을 밤과 낮에 걸쳐 공개하며 ‘이달의 소녀’를 기대하는 팬들의 눈길을 한 번에 끌었다. 소녀의 느낌과 소년의 느낌이 한꺼번에 공존하는 매력을 지닌 ‘하슬’은 자신의 첫 싱글 ‘소년, 소녀’를 통해 그 음악과 비주얼을 극대화했다.
"ハスル"は短い金髪のトムボーイコンセプトと長い髪の少女のコンセプトを、夜と昼にかけて公開し、"今月の少女"を期待するファンの目を一気に惹きつけた。少女らしさと少年らしさを同時に共存させる魅力を持つ"ハスル"は自身の初シングル「少年、少女」を通してその音楽とビジュアルを極大化させた(「Haseul」アルバム紹介より)。
本来少年と少女、どちらの魅力も持つはずのハスルが、自身の持つ少年らしい面を自ら殺してしまった。
「Butterfly」のティザー映像である "XIIX"では、後述するゴウォンというメンバーが必死に車を追いかけて走る姿が描かれる。この映像が撮影された場所が「소년,소녀」と同じくアイスランドであること、また映像のところどころに羽根やドリームキャッチャーといった、「소년,소녀」を思わせるモチーフが多々登場することから、このふたつの映像の関連性については指摘されてきた。
少女ハスルが少年ハスルを殺し、ハスルは本当の自分の姿を見つけることができなかった。この「間違い」によって生み出される未来が、ゴウォンの望まない未来であったとしたら?望まない未来を修正するために、ゴウォンが過去に戻ってハスルの乗った車を追いかけていたとしたら?
- ハスルのティザー写真。1枚目が夜を表す少年のハスル、2枚目が昼を表す少女のハスル。少女ハスルが少年ハスルを殺し、ヒジンとヒョンジンと出会った後の「The Carol」では、舞台が夜なのにもかかわらず、ハスルは少女の姿で現れる。
④ヨジン「키스는 다음에」
2017年1月4日、LOONA4番目の少女として公開された。LOONAの世界観の中でヨジンは一貫して「夢見る少女」である。彼女のMVは、彼女の妄想の中の3人の王子様が彼女に求婚する場面から始まる。しかし現実にいるのは、彼女の夢見る王子様とは程遠い、カエルの容姿をした王子様。現実を受け入れられず、逃げ惑ったあげく彼女は森で迷ってしまう。
ヨジンの象徴動物であるカエルにも秘密がある。4番目の少女のティザー写真にはテディベアと共に公開され、その後のティザー映像などでもテディベアが登場したため、4番目の少女の象徴動物はテディベアだと思われた。しかし、デビュー直前に公式ツイッターにて、テディベアの正体は魔法でクマに化けたカエルであることが明らかにされた(…)。
"곰돌이인 척해 봤지만, 사실 저는 개구리였어요 뮤직비디오를 확인해 주시고 꼭 제 마법을 풀어주세요!"
ティディベアのふりをしてみたけど、実は僕はカエルでした (中略) MVを確認して僕の魔法を解いてください!
(左)ヨジン公開前のティザー (右)ヨジンのアルバムティザー(背景に沢山のカエル(…))
▼1oonatic様による「키스는 다음에」のMV解釈。MV中に登場する3人の王子様それぞれを1/3、OEC、yyxyユニットと捉える説(王子の持ち物:ラクダと箱=1/3、靴=OEC、花束=yyxy)。ヨジンは迷わず靴を選ぶが、カエルの王子様は彼女に箱を押し付けようとする描写がある(=1/3に属さざるをえない現実を受け入れられず、逃げた先の森の中で迷ってしまう)。夢の中で目が覚め、それもまた夢であり…という無限ループはメビウス(=LOONAの世界観そのもの)を表すとする。
⑤ビビ「Everyday I Love You」
2017年2月13日、LOONA5番目の少女として公開された。ビビは、1/3の中では比較的世界観中の立ち位置が明らかになっている方である。
LOONAのMVを担当するDigipediのディレクター、문석호監督のインスタグラムに、MV中のビビについての記述がある。
1. '지금, 좋아해' 뮤직비디오는 안드로이드 비비 자신의 정체성과 사랑에 관한 이야기이다. 달리기 후 숨을 몰아 쉬며 힘들어하는 다른 소녀들을 보며 비비는 생각한다. '나는 왜 친구들처럼 힘들어하지 않을까? 왜 심장이 더 빨리 뛰지 않을까? 나도 가슴이 두근두근하고싶다.' 가슴이 뛸 때까지 달리고 달리던 비비는 결국 낯선 길 한 가운데 멈춰 선다.
2. 'Everyday I Love You' 뮤직비디오의 이야기는 비비가 안드로이드로 개조되기 전, 인간 시절 비비의 기억을 복원해 만들어졌다.
3. 네 번째가 아닌 다섯 번째. 탈색한 머리. 빛나는 왼쪽 눈. 초원을 달리는.
既によく知られた内容ではあるが、今一度要約すると、以下のような内容となる。
①ビビはアンドロイドという設定である ➁「Love & Live」ではビビのアイデンティティに関する話が語られる ③ビビのソロデビュー曲「Everyday I Love You」はビビがアンドロイドになる前の、人間時代の記憶を復元して作られたものだ
ビビがアンドロイドであるという設定は、LOONAの生みの親・Jaden Jeong氏も言及する*5。
アルバム「ViVi」に収録されるカップリング曲「Everyday I Need You」では、ジンソルがFeaturingとして(月毎に少女を公開するLOONAとしてはかなり異例な形で)公開された。ジンソルとビビの関係性については、後述することとする。
…と、ここまで書いて、本当はLOONA Hi Highまで書きたかったのですが、思いの外長くなってしまったので、これ以降のメンバーは次回に回したいと思います。途中ですが…
3. おわりに
LOONAのプロジェクトが始まってから約5年、彼女たちが繰り広げる膨大な世界観についていつか何かしらの形で取り扱うことができたら、と思っていました。そんなこんなで、1年半前に作ったメンバー紹介の動画の続編として、世界観についても解説動画を出すことになったのですが、動画として盛り込める内容量には限界があるため、動画の補足として本記事を書き始めました。書き始めた時はそれほどでもなかったのに、今では本当の意味で「今更」になってしまい…。公開するかどうか随分悩みましたが、少しでもLOONA布教のための助けになればと… おこがましい願いをこめて公開します。
LOONAちゃんに幸あれ… 愛をこめて。
あと文章が本当に読みにくくてすみません。精進します。